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第5章 家を出る

Author: Noona Aurora
last update publish date: 2026-08-20 16:01:54

フェリシアはアレクサの言葉を聞いて、しどろもどろになった。視線を別の方向へ逸らしてから、再びアレクサを見つめる。

「別に、そんなに親しいわけじゃないわ。ただ、さっき……さっき……そう、さっきロンアンから連絡が来て、最初は本当にあなたがお父さんの会社へ移るのかって聞かれたの。それで、あなたが退職したことを知ったのよ」

フェリシアの言葉を聞き、アレクサの唇の片端がわずかに上がった。

本当に偽善的で、吐き気がする。

フェリシアの説明には何も答えず、アレクサは踵を返して自分の部屋へ向かった。

しかし、その場を完全に立ち去る前に、アレクサは一度フェリシアを振り返り、口を開いた。

「そうそう。ロンアンとの婚約の日までは、アパートで暮らすつもりだから」

「お父さんが私を探しに来ることなんてないでしょうし、わざわざ伝えなくてもいいわ」

そう言い終えると、アレクサはフェリシアをその場に残したまま歩き去った。

一方、フェリシアは疑わしげに目を細めた。

アレクサの態度に、何か以前とは違うものを感じ取っていた。

**

イヴァンダー家を後にして車を走らせたアレクサは、デヴァンの所有する豪邸へ向かう道を進んでいた。

大きな門を通り抜けた車は、そのまま豪邸の敷地内へ入り、ガレージの前で停車した。

アレクサがシートベルトを外したばかりのところで、車の隣に立っていた使用人がすでにドアを開けていた。

「お帰りなさいませ、お嬢様」

アレクサの視線が、自分に親しげに接してくれる年配の男性へ向けられた。

その温かな笑顔につられるように、アレクサも笑みを浮かべた。

「ありがとう」

車から降りると、アレクサは使用人の制服を着た年配の男性と向かい合った。

その間に、他の使用人たちはすぐにアレクサの荷物を運び入れ始めた。

「申し遅れました。私はトーマス。この邸の執事を務めております。デヴァン様から、私が何をすべきかすでに伺っております」

トーマスの言葉を聞き、アレクサは小さく何度も頷いた。

「こちらへ。お部屋までご案内いたします」

アレクサはもう一度頷いた。

そして、先を歩き始めたトーマスの後を追うように足を進めた。

邸の中へ入ると、アレクサの目はあまりにも豪華な内装に釘付けになった。

認めざるを得なかった。

父親の家でさえ、ロンアンの家族の家でさえ、ここほど大きくはない。

階段を上りながらも、アレクサは建物の隅々まで余すことなく目を向け続けた。

そのため、いつの間にか自分が豪華な彫刻の施された大きな扉の前まで来ていることに気づかなかった。

トーマスは扉の前で立ち止まり、アレクサと向かい合った。

「お嬢様、こちらがデヴァン様のお部屋です。どうぞお入りになって、ゆっくりお休みください」

トーマスの言葉を聞いた瞬間、アレクサの身体が凍りついた。

年配の男性がその場を離れると、アレクサの視線は左手にある大きな扉へ向けられた。

つまり、自分は本来なら「叔父」と呼ぶべき男と同じ部屋で寝なければならないのだろうか?

アレクサはゆっくりと息を吐いた。

今の自分の立場を、本当に受け入れなければならない。

指先でドアノブを掴み、そっと回す。

そして、大きな扉をゆっくりと押し開けた。

部屋の中へ視線を向けた瞬間、アレクサはまたしてもその内装に目を奪われた。

部屋へ足を踏み入れても、アレクサの視線はエレガントな部屋の隅々から離れなかった。

「本当に芸術が好きなのね。どれも上品で、整っていて、きれい……」

アレクサはそう呟き、知らず知らずのうちに唇の両端をゆっくりと上げていた。

**

夕方。

アレクサは遠くを見つめるような目をして座っていた。

何年もの間、信じてきた男によって与えられた、すべての痛みを思い出していた。

ロンアン――彼はただ自分に希望を与えてくれた男ではない。

アレクサに、生きることを本当に愛させてくれた男でもあった。

それなのに、すべてはただの芝居だった。

ロンアンはフェリシアのほうを愛していて、アレクサを利用していただけだった。

あまりにも惨めだった。

アレクサは携帯電話へ視線を落とした。

その顔には、悲しみに包まれた薄い笑みが浮かんでいた。

「見ていて。私からのプレゼントが、あなたをどれだけ驚かせて、喜ばせるのかしら、ロンアン?」

アレクサがまだ携帯電話を見つめていると、扉が開く音が耳に届いた。

アレクサは素早く扉へ顔を向けた。

そこにいたのは、氷のように冷たい顔をした男だった。

その姿を目にした瞬間、アレクサはまた身体を強張らせ、デヴァンと視線を交わした。

デヴァンが何事もなかったかのように、座っているアレクサの横を通り過ぎていく。

アレクサは苦く唾を飲み込んだ。

そして、ようやく立ち上がり、声をかけた。

「お帰りなさい」

デヴァンの足が止まった。

アレクサの身体も凍りつく。

男がこちらへ身体を向けた。

その鋭い眼差しは、まるで刃物のようにアレクサの胸を突き刺してくる。

デヴァンはアレクサの立っている場所へ歩み寄った。

その視線は、彼女の顔から一瞬たりとも離れない。

一方のアレクサは、その場から動くことができなかった。

近づいてくるデヴァンを見つめ続けるうちに、二人の距離は徐々に縮まっていく。

気づけば、目の前に立つ逞しい男の身体から漂うムスクの香りが、アレクサの鼻先をくすぐっていた。

「私を待っていたのか?」

デヴァンの声は冷たく、そしてひどく低かった。

アレクサは下唇を噛んだ。

目の前でデヴァンの手が顔へ向かって持ち上がる。

それでも、男の視線はずっとアレクサへ向けられたままだった。

アレクサの身体は、今度こそ本当に震え始めた。

「こ、これは……あなたが思っているようなことじゃありません」

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